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耳寄りな話




がんの病気




前立腺癌と性生活について

前立腺癌は平成15年、天皇陛下が手術を受けられたことで一躍有名になりました。前立腺癌は泌尿器科疾患の中では最も多い悪性腫瘍です。米国では男性の癌の中で発生率は第1位です(死亡率は肺がんに次いで第2位)。日本においては発生率が10位前後ですが、高齢化、食生活の欧米化、PSA(前立腺特異抗原)の普及により前立腺癌は増加傾向にあります。

さて前立腺は体の中のどこにあって、どんな役目を行っている臓器なのか御存知でしょうか。前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の真下に存在し、尿道を取り囲むように位置しています。また、2本の射精管(精液が通過するパイプ)が前立腺の中を通っています。機能としては精液の一部である前立腺液(精子の栄養j分)を分泌しています。なお精液の約20%が前立腺からつくられています。

以上のように前立腺は男性の生殖機能と密接に関係があります。そのため前立腺癌は性生活が関与しているのではないかといわれています。男性ホルモンは前立腺癌の増殖因子であり、思春期前に去勢された場合前立腺癌の発生はなく、高エストロゲン(女性ホルモン)血症を伴う肝硬変患者は前立腺癌の発生が少ないといわれています。  前立腺癌と性生活との関係ですが、最初の性交年齢が若く、若年時の性交回数が多いほど前立腺癌が発生しやすいといわれています。理由は性交渉による男性ホルモンの分泌、変動が前立腺細胞の遺伝子の変化をもたらしたりするのではないかと考えられています。

それではどのような性生活が前立腺癌の予防によいのかというとはっきりしたものはありません。やはり癌に関しては早期発見が大事で、前立腺癌は早期であれば根治可能な癌です。そのためにも50歳以上の男性の方には症状のあるなしにかかわらず、定期的に血液検査(PSA)をお受けになることをお勧めいたします。

鄭 泰秀



「抗癌剤」治療

「白い巨塔」では腕の立つ外科医、財前教授が主人公です。思い返してみると、私が医学部を卒業して医師になったころは、患者さんは、「○×病院の・・・先生が」”いい”とか、△×大学病院方式とか○△病院式とか病院によってやり方が違っていたりして、評判を耳にして遠い病院を受診したりすることがありました。

また抗癌剤治療を受ける方は髪の毛がばっさり抜け、点滴台を押しながら病棟をひょろひょろと歩き、おうおうと嘔吐する、それでも「やるしかない」と悲壮な抗癌剤治療の印象を私自身受けたものでした。当時は「癌」の病名告知を避けることが多くあり、この場合抗癌剤治療を受けていることをご家族は知っていても、ご本人が知らないという、痛ましい状況もありました。「切除できる」ことのみが全てと考えられていたのも無理からぬ時代でした。

そんな1990年代はバブルがはじけ多くの社会的ひずみを残した一方で、携帯電話・インターネットが出現(IT革命)し、世界規模で医療情報の交換が激しく進んだ時代です。

このような情報化を背景として、抗癌剤治療は2001年から、結局どんな薬をどんなやり方で組み合わせたら最も効果が高いのか”世界最強”の方法が確立してきました。同時に新しい抗癌剤が次々開発・発売され、副作用は少なく効果はよくなりました。「手術」はどこまでを担当して、どこは抗癌剤が担当する、という「担当分け」もはっきりしてきました。これにより、地方でも、都会でも同じ治療を受けることができるようになってきています。

依然「癌」は命を奪いにくる病気であり、「抗癌剤」も減ったとはいっても副作用はあり発展途上であることは否めません。しかし前時代と異なり、「どんな病気が起こっていて」、「どう戦っていくのか」を一緒に悩み、決断し、ともに行っていくことができるようになったことは最も大きな進歩だと思います

井上 健



がん治療センターと整形外科のがん

新病院移転に合わせて様々な医療機器の充実を図ってまいりました。なかでも力を注いでいるのが各種の画像診断機器や放射線治療装置です。がんの診断や治療に欠かすことのできないMRIやCTの解像能力は飛躍的に向上し、また、旧病院では治療装置の老朽化で実施できなかった放射線治療にも高性能のIMRTリニアックが導入されました。さらにこの3月にはPET診断装置が稼動する予定であり、がん治療に関して全国的もトップレベルの医療を提供できる体制が整うことになります。

新病院開設時に『がん治療センター』もスタートしました。この度のPET導入を契機として当センターでのがん診療体制は全容が整います。センター化の最も大きな目的は集学的治療実施のためのチーム医療の推進です。各診療科間の垣根を取り払い、それぞれの専門知識を集約して患者さんに最善の医療が提供できるようなシステム作りです。すでに毎週木曜日には腫瘍カンファレンスが開催されており、徐々に体制を整えているところです。

整形外科領域のがんは、一般的に稀ながんとして認識され、内臓から発生するがんに比較して格段に少ないといわれています。たとえば骨肉腫の年間新規発生頻度は人口100万人当たり2例前後とされており、山口県では2~3例程度と思われます。それに比して成人のがん患者に合併する骨転移の方が圧倒的に多く、また軟部肉腫も当センターで年間5例程度治療する機会があります。


後腹膜肉腫症例(横断面)

整形外科領域のがんは、一般的に稀ながんとして認識され、内臓から発生するがんに比較して格段に少ないといわれています。たとえば骨肉腫の年間新規発生頻度は人口100万人当たり2例前後とされており、山口県では2~3例程度と思われます。それに比して成人のがん患者に合併する骨転移の方が圧倒的に多く、また軟部肉腫も当センターで年間5例程度治療する機会があります。


後腹膜肉腫症例(横断面)

これらの患者さんの治療に際しては、手術や抗がん材治療だけでは限界があり、放射線治療の助けが必要な場合が少なくありません。
今後、整形外科でも、他科と協力しながら集学的治療に積極的に取り組んでいく予定です。

伊原 公一郎



悪性リンパ腫

悪性リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球が悪性化(癌化)し、リンパ節や臓器にかたまり(腫瘤)を作る病気です。大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されますが、日本人で多いのはホジキンリンパ腫です。

またB細胞性、T細胞性、NK細胞性といった種類があり、また顕微鏡で調べた組織型、特徴的な遺伝子の異常などによってさらに細かく分類され、現在では40種類以上もの種類があります。種類の違いによって、治療法、薬剤の効きやすさ、予後(どのくらいの治りやすさか)にも違いがあるため、きちんと診断することが重要となります。

また、病気の広がり具合も治療法の選択や予後を左右する重要な要素で、そのためにCT検査、MRI検査、PET検査、骨髄検査などを行います。一般的に抗癌剤治療や放射線治療が良く効き、これらを組み合わせて治療することで、治癒する可能性も十分あります。

当センターでの治療例


治療前




治療後

(咽頭部、頸部の腫瘍が消失し、
PETでの異常集積も改善しています)

当センターでの治療例


治療前




治療後

(咽頭部、頸部の腫瘍が消失し、
PETでの異常集積も改善しています)

鶴 政



大腸癌の治療

わが国の大腸癌は増加傾向にあり、癌の種類別にみた死亡率でも大腸癌は男性で3位、女性では1位(2007年)と上位を占めています。  大腸癌の治療法には内視鏡的切除、腹腔鏡(補助)下手術、開腹手術、化学療法、放射線治療などがあり、それぞれが近年、著しく進歩しています。

 

大腸癌の治療の基本は切除です。当センターでは消化器科と外科併せて毎年約160例の大腸癌切除を行っています。中でも手術に関しては、早期癌だけでなく進行癌に対しても腹腔鏡を用いた低侵襲(体に優しい)手術を行っており、成果をあげています。また、従来人工肛門を余儀なくされていた下部直腸癌に対しても、最新の術式である肛門括約筋切除による肛門温存手術を開始しました。全ての直腸癌に肛門温存手術を行うことは不可能ですが、少しでも患者さんのQOL(生活の質)維持に努めています。


腹腔鏡を使った手術は低侵襲
(体に優しい)治療法

大腸癌の治療の基本は切除です。当センターでは消化器科と外科併せて毎年約160例の大腸癌切除を行っています。中でも手術に関しては、早期癌だけでなく進行癌に対しても腹腔鏡を用いた低侵襲(体に優しい)手術を行っており、成果をあげています。また、従来人工肛門を余儀なくされていた下部直腸癌に対しても、最新の術式である肛門括約筋切除による肛門温存手術を開始しました。全ての直腸癌に肛門温存手術を行うことは不可能ですが、少しでも患者さんのQOL(生活の質)維持に努めています。


腹腔鏡を使った手術は低侵襲
(体に優しい)治療法

一方で、近年の化学療法の進歩により、切除不能な大腸癌の生存期間はここ10数年の間に2-3倍も延長しています。その理由は、新規抗癌剤、分子標的薬と呼ばれる新しい薬剤が次々と登場しつつあることです。当センターでは外来化学療法室を整備し、エビデンス(根拠)に基づいた最新の化学療法をおこなっています。さらには山口大学と共同し、研究段階ではありますが癌ワクチン療法にも取り組んでいます。

矢原 昇



血液のがんって何?

血液のがんとは、血液の中の血球(けっきゅう)という細胞成分から発生したがんの総称です。具体的には、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病などがあります。この中で、最も多いのは悪性リンパ腫です。

多発性骨髄腫は高齢者に多く、骨の内部にある骨髄(血液細胞の製造工場)で、形質細胞という免疫グロブリン(いわゆる抗体)を作る細胞が悪性化する病気です。白血病には、急性白血病と慢性白血病があり、またそれぞれ骨髄性とリンパ性があります。

つまり、白血病といっても急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病に分けられ、それぞれ違った特徴をもっています。急性白血病は、診断がつき次第、抗がん剤を使っての強力な治療が必要ですが、慢性白血病は名前の通り、慢性に経過します。 慢性骨髄性白血病は、以前は骨髄移植などの造血幹細胞移植以外に有効な治療法がありませんでしたが、イマチニブというとても効果の高い飲み薬が開発されて、それだけで治ったといえる状況も期待できるようになりました。血液がんの領域は全てのガンの中でも、最も進歩の速い分野のひとつです。今後も新薬や、新しい治療法の開発が期待されます。



血液のできるしくみ

鶴 政俊



放射線治療”前立腺がん”

放射線治療で取り扱うがんの中で、治療選択肢が多様で先端の治療技術が並ぶがんと言えば前立腺がんが随一です。前立腺がんでは放射線治療の中でも、通常X線照射から、密封された放射性線源を使用した小線源治療、さらには先進医療の粒子線治療まで応用されます。X線照射の種類は、従来からの外部照射、近年の多重絞りを利用した3次元照射、そして最新のコンピュータ技術の結集により実現されたIMRT(強度変調放射線治療)まで様々です。下関地域で、これらX線照射の全てが実施可能なのは当センターのみです。

前立腺がんにはいろいろなタイプのものがあり、治療の必要のない「おとなしい」タイプから全身骨転移を生じた病態まで幅広くあります。組織型、PSAの値、画像診断、年齢(特に期待余命)を加味して最適の選択をすることになります。良い機械があるから最先端の治療を薦めるのではなく、がんの全体像がわかって適切な治療法を選択することが重要であり、そのため日夜努力しています。
専任技師はIMRTの先進病院である京都大学病院のトレーニングコースに参加、専任医師も数々の学会コースに参加し修練を重ねてきています。泌尿器科医と常に連携をとり、山口大学泌尿器放射線科合同カンファレンスにも参加しています。

患者さんの相談にも応じられるよう相談室も準備しています。


川村 光俊



咽喉頭がんの予防

咽喉頭(いんこうとう)のがんは咽頭(いんとう)がんと喉頭(こうとう)がん(さらに上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)にわけられます。

喉頭(こうとう)がんは耳鼻科領域で最も患者数が多いがんです。喫煙が原因の95.8%という報告もあり、全身のがんの中でも特にタバコとの関連が強いがんです。1日の本数×喫煙年数が400を超えると罹患の危険性が高くなるといわれています。早い時期にかすれ声を自覚されての受診で診断できることが比較的多いがんです。かすれ声は声帯ポリープや結節などでも出る症状ですが、喫煙習慣のある人(過去に吸っていた人も)は声がかすれた時には早めに耳鼻科でファイバー検査を受けてください。


正常な咽頭

下咽頭がん

咽頭(いんとう)がんの中で特に中咽頭がんと下咽頭がんは喫煙と過度の飲酒が発生の強い誘因となることが判明しています。下咽頭はのどから食道へつながる部位で食道がんと同様、熱すぎるもの(一説では70度以上の高温)を飲む習慣も誘因となるといわれています。中咽頭がんの中にはヒトパピローマウイルスが関連しているものがあることが最近わかってきました。

禁煙の成功には禁煙補助薬や禁煙外来の受診が有効です。ぜひ今年禁煙にチャレンジしてください。

村上 直子




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