救急システム
救急現場から社会復帰まで一貫した救急システム
国立病院機構 関門医療センターの救命救急活動
ヘリコプターによる救命救急
概 要
近年血管内手術を中心とした医療技術の急速な進歩により、病院内で行われる救急医療 の成果は目覚しいものがあります。
しかし、病院に搬送されるまでの措置や時間超過により、その恩恵に浴する救急患者さんの数はまだ制限されています。
心肺停止状態で病院に搬送されてきた救急の患者さんで、その後に社会復帰できた方は、この8年間のAED(自動体外式除細動器)の普及で3倍増し、10%になりました。
しかし病院に運び込まれてくるまでの段階で、人工呼吸や心臓マッサージ等が適切に続けられれば、米国のデータでは、20%程度の方が社会に復帰できると言われています。
また、脳梗塞は寝たきりの原因の3割をしめますが、発作から3時間以内に血栓溶解剤t-PAを投入すれば、完全に社会復帰できる確率が倍増します。
寝たきりになるか、日常生活に完全復帰できるかは大ちがいです。3時間以内の迅速な救命救急が必要です。
救急車到着前までの救急活動
病院に運び込まれて来る直前のケア(プレホスピタルケア)は、救急救命士によって既にかなり質の高い体制ができていますが、
救急車が現場に到着するまで平均7分以上かかる間のケア(プレアンビュランスケア)にはまだまだ大きな課題が残されています。
現場に居合わせた方が救急車の到着を待たず直ちに人工呼吸などを始めておかなければなりませんが、その実施率は極めて低いレベルに留まっています。
そのため当センターでは、救急隊の方々とともに、当センターの災害派遣チームにより救命蘇生講習を事業所等に出向いて実施し、その現場に居合わせた方による心肺蘇生の普及を図っています。
特に心肺停止患者が蘇生し社会復帰できる割合(救命率)の改善には、近年開発された自動体外式除細動器の活用がもっとも有効であることから、
当センターの行う救命蘇生講習では自動体外式除細動器の普及を進め、事業所看護師等が医師の包括的指示のもとに除細動を可及的速やかに実施できるよう必要な技能習得の講習会も別途定期的に開催しています。
また、診療所等への設置の普及を図るため、自動体外式除細動器メーカとも連携して、診療所医師への研究会と、看護師等への除細動講習会の定期的開催を行っています。
病院に到着するまでの救急活動
救急救命士の行う除細動をはじめとする救急措置によって、プレホスピタルケアはかなり高い水準で体制が取れている現状にあります。
救急医療は関係者間の信頼関係にもとづいた緊密な連携の中でこそ大きな成果が期待できるものです。
このことから、当センターでは医師をはじめとする病院職員の救急車への搭乗訓練を定期的に行い、救急現場や救急隊の視点で信頼できる病院づくりを進めています。
また救急救命士の研修を積極的に受け入れ、最新の医療技術の修得を積極的に支援するとともに、病院職員との意志の疎通が日常的に図られるよう連携強化に努めています。
病院救命救急活動の強化
平成14年度以来、当センターでは救急医療体制の抜本的な強化を進めているところです。
平成14年度より国立循環器病センターとの連携により血管内手術の充実、心臓カテーテルの専門医を配置し、平成15年4月には新たに救急専任医師や看護師等を配置し救急センターを立ち上げ、
7月には救急隊とのホットラインを開設して救急患者さんの受入れ数は急増しています。
平成15年10月からは、ミニ救命救急センターに準ずる「救命センター」をスタートさせ、24時間365日体制で入院を要する重症救急患者さんを受け入れる体制整備を行いました。
平成16年10月20日には地域関係者の協議機関である下関地域医療対策協議会において、当センターを「救命救急センター」として指定するよう推薦され、平成16年10月25日には山口県医療対策協議会において、同じく合意されました。
その後、厚生労働省との協議会を経て、平成17年5月1日付で山口県知事から下関・長門地域の3次救急医療機関として「救命救急センター」の指定を受け、平成17年8月には、救命救急センター病棟内の改修、平成18年3月には、
24時間365日常時対応可能な救命救急センター外来部門の「救命救急センターER24」がオープンしました。
平成21年4月には新病院がオープンし、最新の医療設備を具備した「救命救急センターER24」を実現し、10月には「大型ヘリポートHC」を付設いたしました。
当センターの基本的機能の一つは、24時間いつでも対応する頼りになる救急医療です。今後とも、下関・長門医療圏の関係者と力を併せて救命率のアップ、安心の街づくりに努力してまいります。