臨床評価指標
病院では、医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフなど、さまざまな専門職が力を合わせて、患者さん一人ひとりのために医療やケアを提供しています。
こうした医療チームが、実際にどういった取り組みをしているのか、どのような結果につながっているのかを客観的に示すものが
「臨床評価指標(りんしょうひょうかしひょう)」 です。
このような情報を公開する目的は、医療の質をわかりやすく示すことで、患者さんやご家族に安心して医療を選んでいただくためです。
また、私たち医療者にとっても、日々の診療を見直し、より安全で信頼できる医療を提供し続けるための大切な指標となっています。
私たちは、これらの指標をもとに、医療の質を常に確認し、改善を重ねることで、患者さん一人ひとりにより良い医療を届けられるよう努めてまいります。
私たちは、国立病院機構「医療の質の評価・公表等推進事業」及び、 日本病院機能評価機構 「医療の質向上のための体制整備事業(医療の質可視化プロジェクト)」 に参加しています。
臨床評価指標は以下のような項目に分かれています。
医療安全:医療事故を防ぐための取り組み
感染管理:院内感染を防ぐための予防対策
看護ケア:褥瘡(床ずれ)の予防や、安心して入院生活を送れるような看護体制
薬剤管理:お薬が安全かつ正しく使われるようにする体制
早期機能回復(リハビリ):術後にできるだけ早く体を動かし、元の生活に戻るための支援
病院運営

診療機能

入院患者の転倒・転落発生率
定義 | 退院患者に発生した転倒・転落件数 | ×100 |
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退院患者の在院日数の総和 |
解説 | 入院中の患者の転倒やベッドからの転落は少なくありません。 原因としては、入院という環境の変化によるものや疾患そのもの、治療・手術などによる身体的なものなどさまざまなものがあります。 発生件数や事例を分析し、転倒・転落の発生要因を特定します。 事例分析から導かれた予防策を実施して、転倒・転落発生リスクを低減していく取り組みを行っています。 |
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入院患者での転倒転落によるインシデント影響度分類レベル3b以上の発生率
定義 |
退院患者に発生したインシデント影響度分類レベル3b以上の転倒・転落件数 (※3b以上=損傷レベルが重症) |
×100 |
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退院患者の在院日数の総和 |
解説 | 入院中の患者の転倒やベッドからの転落は少なくありません。 原因としては、入院という環境の変化によるものや疾患そのもの、治療・手術などによる身体的なものなどさまざまなものがあります。 発生件数や事例を分析し、転倒・転落の発生要因を特定します。 事例分析から導かれた予防策を実施して、転倒・転落発生リスクを低減していく取り組みを行っています。 |
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リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
定義 |
分母のうち、肺血栓塞栓症の予防対策が実施された患者数 | ×100 |
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肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を施行した退院患者数
※ リスクレベルが「中」以上の手術は、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2017年改訂版)」(日本循環器学会等)に準じて抽出 |
解説 | 肺血栓塞栓症は、主に下肢の深部にできた血栓(深部静脈血栓)が剥がれて血流によって運ばれ、肺動脈を閉塞させてしまう疾患です。 太い血管が閉塞してしまうような重篤な場合には、肺の血流が途絶し、死に至ることもあります。 近年、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の危険因子が明らかになっており、危険レベルに応じた予防対策を行うことが推奨されています。 予防方法には、弾性ストッキングの着用や間歇的空気圧迫装置(足底部や大腿部にカフを装着し、空気により圧迫)の使用、抗凝固療法があります。 |
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血液培養 2セット実施率
定義 | 血液培養オーダーが1日に2件以上ある日数 | ×100 |
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血液培養オーダー日数 |
解説 | 広域抗菌薬を使用する際、投与開始時に血液培養検査を行うことは、望ましいプラクティスとなります。 また、血液培養は1セットのみの場合の偽陽性による過剰治療を防ぐため、2セット以上行うことが推奨されています。 |
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広域スペクトル抗菌薬投与患者に対する細菌培養実施率
定義 | 入院日以降抗菌薬処方日までの間に細菌培養同定検査が実施された患者数 | ×100 |
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広域スペクトルの抗菌薬が処方された退院患者数 |
解説 | 近年、多剤耐性アシネトバクター属菌や、幅広い菌種に効果を有するカルバペネム系抗菌薬に耐性のある腸内細菌科細菌など、 新たな抗菌薬耐性菌(以下、耐性菌)が出現し、難治症例が増加していることが世界的な問題となっています。 抗菌薬適正使用の鍵を握るのは正確な微生物学的診断であり、抗菌薬投与前の適切な検体採取と培養検査が必要です。 |
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手術開始前1時間以内の予防的抗菌薬投与率
定義 | 手術開始前1時間以内に予防的抗菌薬が投与開始された手術件数 | ×100 |
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全身麻酔手術で、予防的抗菌薬投与が実施された手術件数 |
解説 | 現在、細菌感染を起こしていないが、手術後の感染をできるだけ防ぐために、 抗生物質をあらかじめ投与することを予防的抗菌薬投与といいます。 開胸、開腹を伴う手術等は、手術開始直前に抗菌薬を点滴などで投与することにより、 手術後の感染を抑えることが期待されています。 |
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d2 (真皮までの損傷)以上の褥瘡発生率
定義 | 褥瘡(d2(真皮までの損傷)以上の褥瘡)の発生患者数 | ×100 |
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退院患者の在院日数の総和 |
解説 | 褥瘡は、看護ケアの質評価の重要な指標の1つとなっています。褥瘡は患者のQOL の低下をきたすとともに、 感染を引き起こすなど治癒が長期に及ぶことによって、結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります。 |
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安全管理が必要な医薬品に対する服薬指導の実施率
定義 |
薬剤管理指導を実施した患者数 | ×100 |
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特に安全管理が必要な医薬品とされている医薬品のいずれかが処方された 退院患者数 |
解説 | 服薬指導の実施は、患者が薬物療法に対する安全性や有用性を認識し、アドヒアランス (患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を向上させるために不可欠です。 |
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バンコマイシン投与患者の血中濃度測定率
定義 | バンコマイシンの血中濃度測定を実施した患者数 | ×100 |
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バンコマイシンを処方した患者数 |
解説 | バンコマイシンは、治療薬物モニタリング(TDM: Therapeutic drug monitoring) を必要とする抗菌薬の1つで、 定期的な血中濃度測定による投与量の精密な管理が必要とされます。測定結果に基づく適正な投与計画により、 腎障害や肝障害等の合併症や耐性菌の発生等を防ぐだけでなく、最適な効果発現が可能となります。 医師や薬剤師らによるチーム医療を推進し、適切にTDMを遂行することが重要です。 |
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急性脳梗塞患者に対する早期リハビリテーション(4日以内)の開始率
定義 |
分母のうち、入院してから4 日以内にリハビリテーションが開始された患者数 | ×100 |
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急性脳梗塞の発症3日以内に入院し、入院中にリハビリテーションが実施された退院患者数 |
解説 | 脳梗塞は、脳の血管が細くなったり、血管に血栓が詰まることで、脳に酸素や栄養が送られなくなり、 その部位の脳組織が壊死あるいは壊死に近い状態に陥ってしまう病気です。 脳梗塞により、運動障害、言語障害、感覚障害等の後遺症が残ることがあります。 発症後に寝たきりの期間が長くなると、体力の低下や認知機能の低下等が起こるため、 早期からのリハビリテーションが重要になります。 そして、後遺症に対する機能回復や日常生活の自立、早期の社会復帰を目指したリハビリテーションへとつなげていくことが求められます。 |
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股・膝関節の人工関節置換術施行患者に対する早期リハビリテーション
(2日以内)の実施率
定義 | 分母のうち、手術当日から数えて2日以内にリハビリテーションが行われた患者数 | ×100 |
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股・膝関節の人工関節全置換術を施行した退院患者数 |
解説 | 人工関節全置換術後の過度な安静は、廃用症候群や深部静脈血栓症を引き起こす原因となります。 こうした術後合併症を防ぎながら、早期に日常生活動作を再獲得するため、術後はできるだけ早くリハビリテーションを開始することが重要です。 |
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大腿骨近位部骨折手術患者に対する早期リハビリテーション
(4日以内)の実施率
定義 | 分母のうち、手術当日から数えて4 日以内にリハビリテーションが行われた患者数 | ×100 |
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大腿骨近位部骨折で手術を施行した退院患者数 |
解説 | 早期回復、早期退院に向けて、術後翌日から座位をとらせ、早期から起立・歩行を目指して下肢筋力強化訓練を行うことが重要です。 |
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