研修医レポート
総合診療部臨床研修医 重本 航輝
吉水内科・よしみず病院の研修を終えて
2024年7月29日から8月23日の4週間にわたって、吉水内科および脳神経筋センターよしみず病院、関連施設にて臨床研修医として地域医療研修を行いました。
症例カンファレンスを中心とした病診連携・退院支援研修から診療技術研修、チーム医療研修まで幅広く参加させていただきましたが、
最も印象に残ったのは地域包括ケア・介護事業研修でした。
2024年現在、我が国において65歳以上の高齢者が全人口に占める割合は30%を目前に控えており、
厚生労働省・総務省の人口推計によると、2060年には総人口8,700万人のうち約40%となる見込みです。
急性期も含め高齢者を対象とする老年医学と亜急性期〜慢性期のケアのニーズは、今後数十年にわたって増加の一途をたどることはほぼ確実と言ってよく、
将来の医療を担う一医師としてcureだけでなく介護も含めたcareへの理解は必須です。
今回の研修では特別養護老人ホーム・グループホーム、ケアハウス、デイサービス、障害者支援施設、地域包括支援センター、
訪問診療・訪問看護・訪問リハビリ・訪問介護など数々の施設を見学させていただき、それぞれの役割・ミッションや運営の仕組み、
これからの課題などを学ぶことができました。
特に患者さん・利用者さんの居宅を訪れる訪問研修では、実際の住環境に足を踏み入れることで見えてくる数々の問題がありました。
患者さんが医療機関まで足を運んで我々医療スタッフと顔を合わせるのは、その方々からすれば生活のほんの一瞬に過ぎず、
残りのほとんどの時間は自宅で過ごしているという当然の事実に今一度気づくことができました。
だからこそ住環境を整備と訪問による専門スタッフの介入は重要であり、社会的に極めて価値のあるサービスだということへの理解につながりました。
また吉水内科での外来研修でも多くを学ぶことができました。
生活習慣病の診察、医学的管理、投薬からそれぞれの病態に合わせた診療計画を総合的に実施し、
地域住民のかかりつけ医として求められる役割がどのようなものであるかを肌で感じることができました。
また臨床医としてだけではなく、学校医や産業医、県および市の医師会の仕事や院内の委員会など多忙を極める先生方の姿を拝見し、
これから年齢を重ねるにつれて職務と責務とが増えていくことに対して身の引き締まる思いでした。
この1ヶ月の研修では、普段急性期医療を行っている研修病院ではほとんど見ることのできない、社会福祉の現場と後方支援病院の重要な役割とを学ぶことができました。
急性期を脱してから各々の患者さんがどのようにリハビリし、自宅や施設に帰り、そして人によってはどこでどのように最期を迎えるかというライフプランを考えるということについて、
深く印象に残った大変有意義な研修となりました。
今回の学びをきっかけとして、今後も臨床医として全人的医療を実践していけるよう精進を重ねる次第です。
沖永良部での1か月を終えて
7月1日から1ヶ月間、鹿児島県の奄美群島南西部に位置する沖永良部島にある沖永良部徳洲会病院にて地域医療研修をして参りました。
沖永良部徳洲会病院は、今年7月10日に逝去された同会創設者で元衆議院議員の徳田虎雄先生により開設され、
132床(一般病棟60床、医療療養40床、地域包括ケア32床)の病床数があります。
離島であるため当センターのような病院と比べると常勤医の数もかなり限られており、我々研修医も主戦力として内科外来から日中夜間の救急対応、
手術・処置・検査や病棟管理、訪問診療まで医師として関わるすべての業務に携わる機会をいただきました。
その中でも特に印象に残っているのは、赴任初日から患者さんとそのご家族に向けて病状説明をしたことです。
はじめましての挨拶をして数時間後には現在の病状や行っている治療、今後の見通しなどをお話しなければならず、
患者さんからの質問に答えながら分かりやすく丁寧に説明するということの難しさを痛感するとともに、
来年から実際の主治医となる身としましては身の引き締まる思いがしました。
また自分が内科外来で診察した患者さんのうち、入院治療が必要と判断した場合にはその必要性を説明したうえで、
持参薬継続の判断や薬剤・食事・リハビリのオーダー、必要時指示などすべて自分で判断して指示を入れるという、
これまでの臨床研修ではあまり持てなかった機会に恵まれたとともに、自らの勉強不足を恥じ、悔やむことも多々ありました。
もちろん困った場合には同僚の研修医や上級医の先生方に相談することもありましたが、
それでもほとんど実質的な主治医として日々の業務をこなすことは初めてであったため、
いち地域研修としては大変貴重な経験を積むことができたと思います。
日中は業務に忙殺され気が付けばもう定時かというくらい時間が過ぎるのが早かったものですが、
退勤後は他職種を含めた同僚と海に潜ってウミガメといっしょに泳いだり、夜は満天の星空を観に行ったりとプライベートの方もとても充実しており、
心身ともにとても満ち足りていた1ヶ月でした。
患者さんを通じてたくさんのことを学び、お互いに助け合い刎頸の友とも言える仲間・スタッフにも恵まれ、
この上ない地域医療研修を行うことができたと思います。
このような機会をいただけたことに感謝し、これからの糧にしていきます。
研修2年目にかける思い
2年目の臨床研修医として、これまでの経験を振り返り、今後の目標を見据えていきたいと思います。
この研修2年目にかける私の思いは、成長と貢献です。
医師として1年目の必修ローテーションがほとんど終わり、2年目に進むにあたって益々深い理解と技術が求められます。
最初はおっかなびっくりで萎縮していたことも、少しずつ経験を重ねるとともに慣れるようになりました。
しかし慣れとは驕りの始まりでもあり、どんな些細なことでも軽視せず、
真摯に向き合って診療に励むことが成長につながると信じています。
また2年目の研修ではこれまでには持てなかった良い意味での余裕も生まれてきたため、より患者さんがお困りであることに親身になり、
丁寧な医療を提供できるようになることが私の目標です。
また2年目の研修では、同僚や先輩との協力や連携も不可欠です。
「三人寄れば文殊の知恵」とも言うように、チームとして力を合わせ、患者さんのために最善の医療を追求する姿勢が重要と考えています。
お互いに助け合い、知識や経験を共有しながら、切磋琢磨できる組織となれるよう励んでいきたいと思います。
2025年度からは、自分が主治医として患者さんの健康に対する重い責任を負う立場になることを見据えると、
今年度はより一層の成長と貢献を目指すべき重要な年です。
謙虚に学び、患者さんに寄り添いながら、医師としての使命を全うしていけるように日々精進していきます。
辛苦を超えた喜びの1年
今年は医師としての研修の1年目を迎えました。
この一年は、様々な試練が待ち受けていましたが、その辛苦を超えた喜びに満ちた時を経験しました。
最初の数ヶ月は病院という新しい環境に慣れることに必死で、院内での立ち振る舞いやスタッフ・患者さんとのコミュニケーションに
戸惑いを感じることもありましたが、上司や先輩方の助けを借りながら、少しずつ成長していくことができました。
初期診療や処置・手術においても初めは不安と緊張が先行することも多くありましたが、患者さんから感謝の言葉をいただく度に、
その辛苦が報われる喜びを感じることができました。
また、同僚や上司との協力やチームワークも自分にとってとても大切な経験となりました。
困難な状況でも助け合い、共に患者さんのために全力を尽くすことができたことは、私にとって大きな喜びでした。
同時にその中で、「十人十色」の考え方が重要であることを学びました。
それは、それぞれの個性や専門性・得意分野を活かし、協力することでより良い医療を提供することができるということです。
この1年間は決して楽なものではありませんでしたが、その分成長を実感することができたことは大きな自信となりました。
これからも、患者さんのために学び続け、医師としての使命を全うしていきたいと思います。
患者さんのために実現したい医師としての人生
医師として働くということは、患者さんの健康と生命を支援するという責任ある仕事であり、
その使命感が私たちの大きな原動力となっています。
私が医師として患者さんのために実現したい人生を考えるとき、以下の3つに重点を置いていきます。
まず第一に、患者さんに寄り添うことが大切だと思っています。
患者さんは、医師を信頼できる存在として認識することで、初めて自分の身体や健康についての悩みや疑問を話すことができます。
そのため、私は患者さんとのコミュニケーションを大切にし、患者さんの視点に立った診療を行うことが必要だと考えています。
次に、患者さんに対して最善の治療法を提供することが大切だと思っています。
医療技術は日進月歩ですが、そうした最新のテクノロジーや治療法がすべての患者さんに最適なものであるとは限りません。
そのため、ひとりひとりの患者さんの状態に合わせた適切な治療を心がけ、
目の前の患者さんが本当に必要としているものを提供できるよう努めることが重要だと考えています。
最後に、医療現場で働くことは、常にチームワークが必要だということを忘れてはいけません。
昨月開催された野球の世界大会であるWBCでは日本代表が世界一に輝きましたが、
その優勝という結果だけでなく組織としての素晴らしさは多くの国民に感動と勇気を与えました。
医療現場でも本当に多くの職種の方々が協力し合って患者さんの治療にあたっていますので、
私たちが一丸となることでよりよい医療を実践することが可能になると考えています。
以上の三点が、患者さんのために実現したい医師としての人生に欠かせない要素であると考えています。
医師として今まさに駆け出しの自分にいつか後輩ができ、部下が増え、責任が大きくなったベテラン医師になっても、
このような姿勢を20年30年と持ち続け、多くの市民の方々の健康と幸福に少しでも貢献できればこの上ない喜びです。