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研修医レポート


総合診療部臨床研修医   古城 沙耶佳


自己実現に近づけた2年間


進む診療科:麻酔科

この診療科を選んだ理由
人間の身体の仕組みを知りたいという知的好奇心がきっかけで医学部を目指したことや、 医学生時代に最も興味を持って勉強した分野の一つに生理学分野があったことから、 自身の医学に関する興味の原点ともいえる生理学に基づく全身管理を専門にしたいと考えたためです。

関門で印象に残っていること
関門医療センターには、昼夜問わず毎日様々な主訴で患者さんが受診されます。
来られた患者さんが感じておられた苦痛を、帰る時までに少しでも軽くしてあげたいという同じ目的に向かって、 その場にいる医療従事者全員が自身の役割を果たすために動きます。 研修医である私たちは目の前の患者さんの診療をする上で指導医の先生方のフィードバックをいただきながら日中や当直での救急診療に臨みます。 様々な診療科のベテラン指導医の先生方はもちろんのこと、身体や心が辛い時も患者さんやご家族からかけられる優しい励ましの言葉に救われながら、 優秀な先輩や仲の良い同期・ユーモア溢れる後輩と共に日々学ぶことができたことは、今後の私の人生にとって大きな財産になりました。

目指す医師像
麻酔科では、手術の侵襲から患者さんの身体を守り術者が安心して手術に専念できるようにサポートする手術麻酔分野や、 ICUなどでの集中治療分野、慢性的な痛みをかかえる患者さんに寄り添うペインクリニック分野など、今後もさらに分野が分かれますが、 どの分野に最終的に進むにしてもこれまで以上に学ぶことに貪欲に、様々な経験をしながら向上心を持って一つ一つのことに取り組み続ける医師になろうと思います。



地域医療研修を終えて


研修 私は今回、山口県の美祢市にある美祢市立病院を拠点に地域医療研修をさせていただきました。 美祢市は、人口2万5千人で毎年千人ずつ人口が減っており、高齢化も進み医療機関も少なく、山奥で独居されている高齢者や 医療機関への受診も自身では難しい地域にお住まいの方など、現代社会の地域医療での問題点がこれでもかというくらい詰まった地域での研修生活でした。

私は出身大学である宮崎大学時代にも地域医療実習として訪問看護・リハや診療などを経験させていただく機会がありました。 その際は、熱心に指導してくださる職員の方々や患者さんに申し訳ないくらいに患者さんよりも病気についてしか関心が無く、 『患者さん一人ひとりの生活状況や介護支援』『住人への行政の支援がどんな仕組みでどこまで行き届いているのか』、説明されてもどこか他人事であまりピンときていませんでした。 そんな思い出しかない中、「また同じことをするのか」と思いながら始まった地域医療研修で、自分の視野がここまで広がるとは思っていませんでしたし、 自分自身の患者さんへの向き合い方を考え直す良い機会になりました。

そんな自分の中でのターニングポイントとなった美祢市立病院での地域医療研修は、 『院内での多職種研修・外来研修』を始め、 病院内での実習だけでなく『地域の開業医院での研修』、 『地域包括ケアセンターや市役所・保健所・複数の訪問看護事務所・消防署での研修』、 『地域ケア会議や介護認定審査会などへの参加』、 『社会復帰センターやテーマ学習に基づいて地域の公共交通ヒアリング』 などにも参加させていただき、自分の職種を超えて様々な職種の方々からお話を聞かせていただく中で、 地域医療を支える上であらゆる組織と病院の繋がりがあることを知り、どこか他人事であった地域医療を支えるシステムについて理解を深める貴重な機会になりました。

研修 ここでの研修の全てを語り尽くすことはできませんが、特に心に残った内容の一部をここに書き留めておきます。
そのうちの一つは初週に参加させていただいた地域ケア会議(個別会議)でのことです。 この会議では在宅でデイケアや訪問介護などの支援を受けている方の生活支援についての見直しを行う会議でした。 患者さんは腰部脊柱管狭窄症とパーキンソン病、うつ病を患っている患者さんで、奥様の介護を受けながら生活されている方でした。 脊柱管狭窄症に伴う両下肢の痛みの増悪で運動量が減り、廃用が進行していることや本人のリハビリへの意欲も低下していることについて何かできないかという議題での多職種での話し合いが行われました。 研修 定期的に本人の様子や介護者である奥様の話を聞くケアマネさん、デイケアでのリハビリ支援を行うPTさんや訪問看護事務所の看護師と医師の立場として様々な職種がお互いに意見を出し合いながら、 その方の生活背景や人生の楽しみ、奥様のことまで私たち医療者が「自分の役職としてどういった声かけや対応の工夫ができるか」をみんなで考える姿勢を目の当たりにし、 俗っぽい表現ではありますが感動してしまったのを覚えています。

また、テーマ学習として美祢市の医療公共交通事情について調べる中で参加させていただいた美祢市公共交通ヒアリングでは、 病院側と市役所側の意見交換や市としての政策が、実際にどのような過程を経て実現するまでに至るのかを具体的にイメージする良い機会になりました。

研修 他にも、病院内での他職種研修では日々の業務の中であまり聞けないことや経験しないことまでさせていただき他の業種の立場に立つことで自身の視野が広がったように感じます。 また、訪問診療・リハ・看護実習では、実際に患者さんのご自宅を訪ねて、病院の外来ではなかなか聞き出せないお話や生活環境・家族の状況まで包括的に把握し、 寄り添う医療を目の当たりにすることができました。 このように、美祢市での研修では毎日病院だけでなく様々な職場に行き、新しい発見の連続でした。

私はこれまで、患者さんの生活に寄り添った医療を提供する支援という文言を地域医療と頭で結びつけて認識していましたが、 病院内で完結する医療に慣れ、退院したその先のことまで考える想像力が足りていなかったと改めて認識することができました。 自分にとって旅行以外では縁もゆかりも無い地での地域医療研修で、正直この 1ヶ月も他人事で流す実習になるだろうと思っていましたが、ここで学んだことを生かし、 残り少ない研修医生活でこれから出会う患者さんの背景にも、これまでよりも気を配れるような診療を心掛けたいと思います。



3ヶ月の経験とこれからの挑戦


研修医としての生活が始まってからはや3ヶ月が経ち、当直や日直の回数も増えてきましたが まだまだ周りの先生や看護師の方々に助けられてやっと診察から検査、治療方針の決定までできている状況です。

日頃の日勤での業務も、循環器内科の2ヶ月を経た後、整形外科を1ヶ月、現在は麻酔科での研修をさせていただいています。 最初の2ヶ月とは打って変わり、次の2ヶ月間はオペ室業務を中心に清潔操作や縫合を学び、 麻酔科で麻酔や人工呼吸器に触れながら人体の生理機能について改めて学び直す機会をいただいています。 また、麻酔導入からの挿管を行い、手術中もモニターを通して患者さんの生理的反応に応じ薬剤量の調整を行うといった、 手術を始める上で欠かせない麻酔科の魅力に惹かれつつある自分がいます。

各診療科を回るごとに、学生の時は触れることのなかったその診療科のより深い魅力に今後も敏感に心を動かされながら 自分の将来の進路についても考えていけたらと思います。



患者さんのために実現したい医師としての人生


研修医生活が始まって2ヶ月目に入り、4月の初めのころの自分と比べてどれだけ成長できたのだろうと最近よく考えます。

いざ臨床の現場に出てみると、国家試験までに身につけた知識だけでは実臨床の現場では全く太刀打ちできないことや、 自分のこれまでの勉強はあくまで統計に基づいた最も一般的な知識をただ頭に詰め込んでいるに過ぎなかったのだということを痛感しています。 この一ヶ月半は、自分の受け持つ入院患者さんの疾患の病棟管理を中心に、指導医の先生や看護師さん、技師さん、 事務員さんなど病院を支えるスタッフの方々に何度も助けられ、教わりながら毎日を過ごしています。

また、入院患者さんの顔を見に行くと、患者さん自身が一番苦しいはずなのに私の身を案じて「大変ね、ありがとう」と声をかけてくださる方もいて、 逆に私が救われていることがたくさんありました。 今はむしろ自分の方が誰かに支えられていることばかりで、誰かの役に立てている実感なんていうものは皆無ですが、 早く自分も誰かを支えられるよう日々研鑽を積んでいこうと思います。



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